Good fine days
空が高い。風が軽い。駆け抜けて揺らす枝には黄色の葉。ざわりと鳴る銀杏並木。
伸びる影を踏んで歩く、小柄な影。
僅かに先を歩く、橙の髪。
まばらな人影。並木道。制服姿の二人。いつも通りに、ほんの僅かな距離感。
普通ではない二人。それでも当たり前のように、同じ場所に居る。
遅れる歩みを気に掛ける視線。斜めから横顔を見上げる瞳。
交わらないそれには、互いに気付かない。多分、気付ける程の自覚も無い。
早い斜陽。速やかな夕暮れに向かう時間。
あ、鳶。
「あー…鳶が低く飛ぶと雨なんだってな」
取り留めの無い言葉。
「では、明日は晴れだな」
何となく、同じ空を見上げた。
高く飛べ。もっと晴れるように――。そんな、他愛無い願い。
It will fine tomorrow.
Will you fine tomorrow?
I pray you have a good time.
束の間の静謐。刹那の永遠。
瞳は見詰め合う為で無く。両手は刀を握る為に在る。
二人、歩む先を違えても、願う事は同じと信じる。
「真っ直ぐ帰るか?」
「何だ、寄る処でもあるのか?」
「別に」
「私に気を遣わずとも良い。行ってくればよかろう」
「だから、単に聞いてみただけだって」
「……そうか」
互いに促し合って、歩みを進める。
夜に侵食される空。闇と同化していく影。そのどちらもが、恐れるには値しない。
広漠の地。霧に閉ざされた視界。
その未来に、ただ己の足跡を刻むのみ。