種類とバリエーションだけは多い、聴いてそれとすぐ分かるクリスマスソング。
いい加減食傷気味になってきた所で、ようやくクリスマスが終わる。
誰が祝うんだか分からないハロウィンのディスプレイが素早くクリスマス仕様に変わったように、明日…というか今日からは速やかに街は正月気分へ移行する筈だ。
だからどうだと言うつもりは無いが、ともかく雰囲気から来る俄かカップルに触発された、迷惑なデートのお誘いが減るだけでも有り難い。
というかそもそも、どうしてクリスマスを恋人と過ごさなくてはならないのだ。周りがどうだろうと、幾らでも楽しんで過ごす方法はある。
乱菊は、スーツの内ポケットに入った重さに立ち止まった。
何となくそれを取り出して、冷たい滑らかさを手の中で転がす。
イブの夜に、顔馴染みから押し付けられたプレゼント。
そう、本当に只の顔馴染み。何者なんだか分かったもんじゃない。
だが、結局自分が受け取ったのは、彼がそうだったからかもしれない。最初から本人に返品拒否されたのもあるけれど。
中途半端に止まった歩みを再び始めて…しかしそれは手に持ったまま。
浮いた余韻の残る街。触れる懐中時計は、どこか醒めていて心地良い。