がやがやと騒がしい教室。
 授業もホームルームも終わって、学校の一日も終わる。
 机に放り出した鞄の中から、電源を落としたまま忘れていた携帯電話を取り出した。
 メールの受信確認をする間、ふと、視線を周囲に彷徨わせる。
 漂うのは、どこか浮かれたような、奇妙な熱気。
 純粋に楽しめるんだから、カワイイわよね。
 他人事のように思ってみる。
 実際、他人事なんだけど……。
 とは言え、持って来なかったというのは正しくない。
 まあ、女友達とチョコ遣り取りすんのも楽しいし。
 っていうか、大っぴらにお菓子持ってても言い訳きくしね。
 考えてみれば、結構ロクでも無い話だけど。
 手の中の振動が、思考を引き戻した。
 着信メールに目を通して、短く返信。
 淀み無い指の動きが、しかし、最後の一件で思わず止まった。
 ……何考えてんの。
 と、教室の向こうから掛かる声。
 慌てて目を上げ、教室を出て行く数人に手を振り返した。
 携帯の画面に戻り、暫く経って、指を動かす。
 鞄を持つと、立ち上がって教室を出た。
 送信先は、いつもの後輩。
 まあ、取り敢えず、ちゃんと受け取ってんのは感心だわ。
 一大イベントなワケだし、受け取り拒否されるのってキツイもんがあるわよね。多分。
 好意的に考えた後、しかし、小さく心の中で付け加えた。

 その気合の入った数々の処理をあたしに手伝わせようとすんのは、本気でどうかと思うけど……。





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